札幌、熊本、愛知、茨城など
全国から熱列なかわぐちファンを迎えて
かわぐちかいじ さん講演会9月2日開催
「マンガという文化」 描きながら考えること
主催 NPO法人小金井市文化協会 小金井宮地楽器ホール
講演要旨
・なぜマンガを好きになったか
・尾道が育ててくれたもの
・マンガの作成過程
・ストリー 発想がすべて
(講演要旨の詳細は後記)
参加者
・札幌、熊本,愛知、茨木からも参加していただきました。
・20歳代から50歳代の方が多く、また、講演を熱心にメモを取っていた方が目立ちました。
・質問の時間では、一斉に10数人が挙手し関心の高さが伺えました。
・最初の質問者で、札幌から駆け付けた男性は、北海道の置かれた今を思い、安全保障問題をマンガに取り組んでいるかわぐち先生の講演を是非お聞きしお会いしたいと参加されました。
参加者の感想
・「先生がお描きになって下さっている姿を拝見できて嬉しかったです。 今日のことは私の人生の中で大きな出来事の一つになりました!東京まできて本当に良かったと思います。先生のお話しを直接聞けて自分の中でも深く考えることもありました。(熊本 女性)」
・「有料でも参加します。(茨城 女性)」
・「あれだけ熱心に質問がでる講演会は、あまり記憶がありません。(小金井 男性)」
・「あれだけ参加者が満足顔で帰って行く講演会は、私の経験からしても初めてのことでした。(小金井 女性)」
講演要旨
・なぜマンガが好きになったか
大学生のころ上村一夫のあるマンガに出会った。海、浜辺、一人の少年、別荘、男女、飛んでいる蝶々が描かれていた。それは、単純な構図ではあるが、静寂の中で一人疎外されている少年の寂しさが見事に描かれていた。
「映画でもない、小説でもない。絵でもない」これらでは表現できない。わずかなマンガのコマの中にいろんな要素が込められており、それを見る人が見る人の想像力を働かせ、マンガに引き込まれ、参加し楽しむことが出来る。このマンガには、マンガの面白さ、マンガの基本が描かれており、マンガが好きになった。
そして、このようなマンガを描きたいと、強く思った。
・尾道が育ててくれたもの
生まれ育った尾道は山が海に迫っていた。海辺の商店街があるところから急な狭いつづら折れの長い石段の坂道を上り、山の高いところにあるお寺などに良く行った。山の高いところから下を見ると、自分が歩いてきた石段の坂道、海に添って続く細い市街地、海、手漕ぎの船、船が行き交う尾道水道、それに続く幾重にも重なる瀬戸内海の島々の風景などが見えた。高いところから俯瞰して見たその景色とその経験が、自分が今どこにいて、立体的に客観的に物事を見ることが出来る自分を育ててくれたのではないか。と思う。3次元の世界を立体的に見ることが出来るようになったのも尾道の経験があったからこそだと思う。
双子の弟とはいつもいっしょに行動し仲が良かった。教育ママの母親のもとで、母親の目の届かないところでは、いつも2人でマンガばかり描いて過ごしていた。元軍人で戦争を経験した父親は、タンカーで輸送業を経営しており、父の船に乗せられ、出港・着岸時は手伝い、退屈な航行時は瀬戸内の船・島など風景を見ながら空想し物思いに更ける日々を過ごしていた。家業は弟が継いでくれることになり、マンガ家をめざすことができ、大学3年の時マンガ家としてデビューした。祖父は、筆でいとも簡単に動物を生き生きと描いていた。まるで鳥獣戯画を描いているようであった。祖父の筆は「魔法の杖」のようであり、今でも鮮烈に記憶している。
このような環境の下での生活や経験、人とのかかわりが、マンガを描く世界で影響しているのではないかと思う。
・マンガの制作過程
- 文字原稿の作成
- 文字原稿でページを割り振る
- ページごとにセリフを書く
- この段階で編集者と打ち合わせを行う。
- 絵を描く
ステップ1 鉛筆画
ステップ2 ペン画
ステップ3 完成
・ ストーリーは、発想がすべて
面白いマンガは、ストーリーの発想がすべてであり、これで決まりだ。
沈黙の艦隊は、最近読み返してみて発想が良かったと思う。
日本初めての原子力潜水艦、日米により極秘に建造された海江田艦長が指揮する原子力潜水艦がなぜ逃亡したのか、乗組員が76人もいながらなぜ反乱者を出さなかったのか、海江田艦長は国連へ出席する、アメリカのベネット大統領とも話し合う。
そこには、日本は非核3原則があり原子力潜水艦は持てないのになぜ原子力潜水艦なのか、日米安全保障条約とは、国家とは、独立国とは。などのいろいろな要素があり、これらをきちんと書かないと話が成立しない。国際間の約束、日本の法制度、原子力船、国会での議論、海江田艦長の能力・性格と良きライバル深町等、事実に基づき綿密にリアルティに描く、あるいはもしかしたらこのようになるのではと空想を交え描く。リアルティと発想が面白さの決め手となる。
作品の中で,海江田艦長が独立国「やまと」を宣言するころ、ストーリは面白くなって来て滑走路を走る飛行機が、ある瞬間に離陸し舞い上がるるときのように感じる。そして、読者を見たことのない高いところの世界へ引きずり込んで興味や関心を高めていく。こういう発想だ。
(沈黙の艦隊は、30年前の作です。今もなお色あせないで大きく注目され、高い関心を集めているのは、要素のリアリティを徹底的に追求していること、スケールの大きさ、安全保障にかかわる国際情勢と日本のあり方を問うと言う今に通じる課題をストーリーで展開しながら、読者の経験したことのない空想の世界に引き込んでいく魅力があるのではないかと考えます。)
映画製作記者会見 9月29日から東宝系の劇場で公開
かわぐちかいじさん、(原作者)
映画化は、なんと無謀だ。 テーマとスケールから絶対できないと思っていた。
今は、爽快な気分だ。期待し、 わくわくして楽しみにしている。
大沢たかおさん、(主演)
沈黙の艦隊はすごい話と知っていた。しかし、スケールから映画化・映像化は不可能だと言われてきた。
今やらねばと信じ、挑戦し実現にこぎつけた。ファンの皆様、そして知らない人に是非見ていただきたい。